Stage 1:マスタープラン 2月.2006
Mount Fuji Architects Studioのメンバーを交え、4棟をどのように有効活用するかアイディアを出し合いました。
現場足湯デッキのある場所には家が1軒建っていたのですが、それを解体撤去して広場にし、残りの3棟をリフォームして一体的に活用するというプランがこのとき生まれました。
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工事着手前の敷地
( 赤い矢印が現在の足湯デッキの場所 )
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3棟+広場の模型を作って議論を重ねました
Stage 2:解体(その1) 7月.2006
マスタープランをベースに実際の設計はMount Fuji Architects Studioの一級 建築士である石井尚人氏にお願いすることになりました。 古い木造建築のリフォームのため、どうなっているのか開けてみないと分から ない。設計に悩んでいても仕方がないので、とりあえず壊してみることにしま した。 こうして友人達の協力のもと、現在カフェになっている建物の解体作業がはじ まりました。
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第1回解体作業のメンバー
( 赤い矢印が現在の足湯デッキの場所 )
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うずたかく積まれた廃材の山
Stage 3:解体(その2) 9月.2006
いよいよ次は間の家(現在足湯デッキとなっている場所)の解体。
さすがに家一軒まるまる解体することは私たちでは無理なので、業者さん(秀幸建設)にお願いしました。
間の家の壊すと、風景がばっとひらけ山が見渡せるようになりました。ここに足湯ができたら気持ち良いだろうな・・と足湯デッキ構想がかたまりました。
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写真中央の家をまるまる一棟解体しました。
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解体中の様子、これまでの解体でたまった廃材も一緒に運んで貰いました。
Stage 4:NARAYA展開催 12月.2006
現在カフェとなっている建物の地下には倉庫があって、奈良屋旅館時代の古文書類や宿帳などが保存されていました。これら資料の大整理も解体作業と同時進行で行いました。
資料のなかには歴史的価値のあるものもあり、この機会に奈良屋の歴史に関する展示会を開催することにしました。4日間という短い開催期間にもかかわらず、200人程の方が来てくださいました。
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倉庫から見つかったNaraya Hotel時代のワインリスト
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高輪の洋館(友人の会社の事務所)にて開催
Stage 5:解体(その3) 2月.2007
解体作業をはじめて約半年、だいぶ腕も上がってきました。
その間に設計も固まり、崖上の増築部分(現在カフェ内テラス席となっている部分)を解体撤去し、構造をスリムにした上で耐震補強することにしました。
「ここまでやったのだから最後までやってしまえ」ということで、1Fの床を剥ぐまで全ての解体作業を自分達で行いました。
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崖上増築部分解体はスリリングでした
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床を全て剥がしたカフェ建物内
Stage 6:耐震改修 3月.2007
いよいよ耐震改修です。これまでの解体作業で柱の腐ったところなど、構造上の問題点は分かってきたので、そこに必要な補強をしなくてはなりません。
やはり木造のエキスパートは大工さん、その大工さんを探して行き着いたのが大山材木店さんでした。
大工さんの職人技を傍らで見ながら、ときには解体、時には設計を修正しながら、一緒にカフェの内部を作り上げていくのはとても楽しい経験でした。
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構造を補強するため新しい梁が一本加わりました。
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カウンターが付き、だんだんカフェらしくなってきました。
Stage 7:柱&壁塗り 4月.2007
改修が済んだら次は内装です。柱は柿渋という天然塗料で色を付け、壁はスイス産の天然漆喰を塗ることにしました。
もちろん壁塗りも初体験、1F,2Fとあわせるとかなりの量の壁がありましたが、友人達がかわるがわる手伝いに来てくれました。
壁塗り・・・これがまた楽しい作業で、私を含め何人かの友人をとりこにしました。カフェ内の全ての壁は塗った人それぞれの気持ちがこもっています。
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10人以上の友人がかわるがわる壁塗りを手伝ってくれました。
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手前のピンクの壁は大工さんに張ってもらった石膏ボードの下地、奥の白い壁が漆喰を塗った壁
Stage 8:足湯広場作り 6月.2007
壁塗りをする傍ら、足湯広場の設計を進めました。
足湯は通りから気軽に入ることができるよう、通り沿いの少し高くなったところに配置しました。
基礎工事は解体工事を行った秀幸建設さん、ウッドデッキなどの木工事は引き続き大山材木店の大工さんにお願いしました。現場監督のいないこの現場、土木屋さん、鉄骨屋さん、大工さん、配管屋さんなどにマルチに指示を出す、設計士・石井尚人氏の手腕が発揮されました。
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足湯は曲線を主体としたデザインにしました
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基礎打ちは通りとのレベルを見ながら慎重に
Stage 9:家具&照明 7月.2007
店内のインテリアは、あるものを上手く利用することにしました。
一枚板のベンチは、大山木材店さんで木を調達し、さいとう工房さんに鉄で脚をつけてもらいました。1Fにあるテーブルは解体作業で出てきた古い建具に鉄のフレームを組んで、ガラスをのせた建具テーブルです。
ギャラリーにあるソファーは旅館時代のソファーを張替えました。また、スポットライト以外の照明は旅館で使っていたものです。
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さいとう工房にて制作中の建具テーブルとベンチ
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奈良屋一号別館で使っていた照明。カフェの吹き抜けに取り付けられました
Stage 10:プレオープン 8月.2007
足湯と内装工事が完成したので、サインやメニューなどまだまだ不十分なところはありましたが、8月のあいだ試験的に店をオープンしました。
実際に接客することでカフェ・足湯を利用する人たちの生の声を聞くことが出来、施設としての、またメニュー構成などの改善点も見えてきました。
お客さんの多くは通りがかりにたまたま足湯を目にして入ってきた人たちでしたが、じっくりと店内を見て行く方も多く、励みになりました。
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家族連れ・カップルその他、様々な方に足湯を利用してもらいました
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解体屋・塗装屋・左官屋と転職(?)し、ようやくマスターに
エピローグ Epilogue
これまで見ていただいたように、私たちは解体作業から現場に張り付き、問題が起こればそこで一休止し、常に私たち夫婦と設計士の3人で一緒に考え、その場その場で最適な打開策を探ってきました。
通常よりも何倍も時間がかかり、設計士に過大な負担がかかったことは言うまでもありませんが、この方法の最大の利点は「これまでのすべての過程を納得できる」ということです。
また、自分達で作り上げたということ充実感も味わうことが出来ました。
同級生で飲み友達であった石井尚人氏に、はじめてNARAYA CAFE計画を話したのは2年以上前のことでした。その時からこの計画の最大の理解者であり、いっしょにNARAYA CAFEを作り上げてくれた彼に心より感謝しています。
そして改装中、多くの友人が支えになり、力を貸してくれました。
思いを共有する仲間が増え、カタチになっていく、これからもそんなNARAYA CAFEであり続けたいと思います。
2007年9月23日 安藤義和 恵美